

実は、子どもの将来の成功を決める要因は、テスト成績や習い事の級位ではなく、「体験の豊かさ」にあります。
この記事では、脳科学的根拠とともに、「わが家が実践している体験学習」の具体例、そして「忙しいワーママでも無理なく実現できる体験の増やし方」をお伝えしています。
わが家が習い事を減らしたきっかけ
私自身は長男が小さいときにはたくさんの習い事をさせていろんな経験をすることが大事だと思っていました。

長男が3歳の時、「英会話」「体操教室」「学研教室」と、いろんなジャンルの習い事スケジュールを組んでいました。「子どもに良い教育を受けさせたい」という気持ちからたくさんの習い事をさせていたのです。
ところが、ある時期から、次のような現象が起きたのです。
- 帰宅後は、習い事の疲労でぐったり
- 親子の会話時間が、習い事の送迎ばかりになった
- 子ども自身、「得られた喜び」より「やらされている感」が強くなっていた

そんな時、体験することの大切さ、非認知能力の育成について学ぶ機会があり、次男以降は実験的に習い事を減らし、『子どもの好きなことをする時間』を増やすという選択をしました。
「体験重視」へ変更で変わったこと
変化1:子どもの「知りたい欲」が爆発的に増えた
習い事が減ったことで、親子で「やりたいことを選ぶ時間」が生まれました。

「虫を探しに行きたい」「川で遊びたい」「種から野菜を育てたい」という子どもの「これやってみたい」という声が、毎週のように出てくるようになったのです。
驚いたことに、その「子ども自身が決めた体験」には、親が教えなくても、子ども自身が没頭していました。
虫を捕まえたらどのように飼育するのか。自分たちで図鑑を読み解いてあるもので工夫するという体験ができるように。
つまり、親が「勉強しなさい」と言わなくても、体験の中から「知りたい欲」が生まれ、その知りたい欲が自発的な学習につながったのです。
変化2:子どもの「自信」と「自己肯定感」が明らかに高まった
習い事では「先生の指導に従う」というパターンがほとんど。
一方、自然体験では「自分で何をするか決める」「困ったら自分で工夫する」というプロセスが繰り返されます。
例えば、「公園で秘密基地を作ろう」という子どもの提案に、親として「いいね、やってみよう」と任せちゃいます。
その過程で、子どもは以下のような経験ができます。
- 「この木の枝は、どうやって積むと倒れないか」を試行錯誤する
- 上手くいかないと、別の方法を考える
- 兄弟間で「手伝ってよ」と頼み、協力する
- 完成した時の達成感を感じる
この「自分でやった、自分でできた」という経験が、子どもの心に「私はできる人間だ」という揺るがない自信を与えてくれるのです。
変化3:親子の関係が、『指示する親』『指示される子』から『一緒に発見する親子』に変わった
習い事で送迎していた時は、親子の会話は「習い事に関すること」だけでした。
一方、自然体験では、親子で一緒に「発見」をしています。
「あ、あの花、もう咲いてる」「この虫、何だと思う?」という自然な会話が。
親子で同じものに驚き、同じものに疑問を持つ。その共有体験が、親子の絆を深めてくれます。
仕事で疲れたワーママとしても、この時間は「子どもに対する義務」ではなく、「自分自身も楽しむ時間」に変わりました。
その楽しさが、子どもに伝わり、さらに体験が深くなる。このポジティブサイクルが生まれたのです。
「体験」と「習慣」が脳を最も育てる
子どもの脳を育てるために最も重要なのは、「五感をフルに使った、生の感動体験」だとされています。
そして、その感動体験によって分泌される「ドーパミン」という快感物質が、脳内の神経回路を新たに形成し、その結果として「学習したい欲求」が生まれるのです。
つまり、親が「勉強しなさい」と強要する学習よりも、子どもが「やってみたい!」と自発的に取り組む体験の方が、脳科学的に圧倒的に効果が高いということ。
「認知能力」と「非認知能力」:人生全体を左右するのはどちら?
教育心理学では、人間の能力を2つのカテゴリーに分けています。
認知能力: テスト成績、読み書き計算など、測定可能な能力
非認知能力: 自己肯定感、問題解決能力、創造性、協調性、レジリエンス(回復力)など、測定しにくい能力
ここで注目すべき研究結果があります。
長期的な人生の成功度(仕事での成功、人間関係の充実度、人生満足度、社会への貢献度など)を左右するのは、実は「非認知能力」の方が圧倒的に大きいということです。
そして、この「非認知能力」を育成するためには、「難易度の高い問題をひたすら解くこと」ではなく、「自然の中での遊びのような、五感に刺激を受けるさまざまな体験」が最も効果的だとされています。
「体験格差」という現代の課題:本当の豊かさの定義
興味深いことに、教育学の研究では「体験格差」という新しい課題が浮かび上がっています。
これは、「教育格差」(受けられる教育の質や量の違い)だけでなく、「五感をフルに使える体験の有無による差」が、子どもの将来に大きな影響を及ぼすという意味です。
具体的には、以下のような「当たり前だった体験」が、実は現代の子どもたちには不足しているのです
- 外を歩いて季節の変化を肌で感じること
- 家庭で親と一緒に食事作りをして、食材の旬を知ること
- 自然の中に入って虫を探すこと
- 雨の音を聞く、泥の感触を感じること
- 夜中に星を眺める
- 祖父母と一緒に昔ながらの知恵を学ぶこと
- 失敗して、また挑戦するプロセスを何度も繰り返すこと
親が焦って「習い事をいっぱいさせる」ことよりも、「親子で一緒に季節を感じる」「子どもの『やってみたい』に付き合う」という方が、子どもの人生全体に大きな価値をもたらすのです。
わが家の体験学習
では、実際にわが家が何をしているのか。
わが家が実践しているのは、「高級リゾートキャンプ」ではなく、「基本的なテント泊のキャンプ」です。初期投資はかかりますが旅行に行くよりは安価で、その後の1回あたりの費用は約5,000円〜1万円程度です。
キャンプは準備や片付けが大変そう・・・ アウトドアがあまり好きじゃなくて・・・ 私も外活動は好きではなく、虫や汚いのも好…
学習教材を使った体験学習もおすすめ
Z会
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子どもの勉強、このままで大丈夫かな・・・ 毎日仕事と育児で本当に目が回るような忙しさですよね。 うみ 私も毎日バタバタと過ぎる日々の中でふと「勉強足りてる・・・?」と不安になることがあります。 […]
進研ゼミ
進研ゼミのオプション教材、「かがく組」では毎月1つのテーマを掘り下げた、子どもの知りたいを刺激する雑誌もあります。
ワーママが実践できる「5つの体験増加テク」
わが家は、月1キャンプ以外にも体験を増やす工夫をしています。
テク1:「観察地点」を固定して、季節の変化を追跡する
同じ場所を週1回訪れることで、季節の細かな変化が見えます。
わが家の場合は、「近所の神社」や「家の裏の畑の野菜」などを観察地点に設定。毎週の習い事の送迎で、子どもと一緒に5分だけ立ち止まります。
この5分の継続が、1年で52週、つまり520分(約9時間)の「季節観察の時間」になるのです。
メリット: 追加の時間を必要としない。既存の移動時間を「観察」に変えるだけ。
テク2:食卓を「体験の入口」にする
調理の体験を一緒にすることで、その過程でいろんなことを学びます。
- 調理の過程で「なぜ玉ねぎを切るときだけ目が痛くなるのか」という科学的質問が自然と出てくる
- 「この野菜、今旬だよ」という季節知識を自然に学ぶ
らでぃっしゅぼーやは、旬の野菜やスーパーで見かけることの少ない野菜も届くため、食育になっています。
時間がなくてついついいつも同じ野菜を買ってしまう・・ 安全でおいしい野菜を食べたい 子どもにも野菜を食べてもらいたい 買い物の時間がなく、いつも同じ野菜を買ってし[…]
メリット: 実際の家事(食事準備)を、子どもとの体験に変えることで、「親の時間 + 子どもの教育」が一体化。
テク3:図鑑で「体験の拡張装置」にする
子どもが公園で見つけた虫、花、石を持って帰ったら、すぐに図鑑で調べます。
この「体験 → 知識の拡張」のサイクルが、「体験学習の完成形」です。
子どもが「自分で調べたい図鑑を選ぶ」というプロセス自体が、「読む力」と「問題解決能力」を育てます。
もちろん、図書館でかりてきてもOK! 図書館は無料で多様な図鑑が揃っており、子どもの「知りたい欲」を満たす最高の施設。
テク4:「寄り道を許す」という親の決断
時間がある日は目的地までの過程も楽しめるように寄り道するものだと思っています。
- 公園に着くまでの道で、子どもが「立ち止まりたい」と言ったら、時間が許す限り立ち止まる
- 「この石、きれい」「あの花、面白い」という子どもの発見を、親が「そうだね」と共感する
この「親の心の余裕」が、子どもの体験学習を豊かにしてくれます。
ワーママは、仕事の時間制約から「効率」を最優先する傾向があります。しかし、週末だけは「非効率」を許す。この「切り替え」が重要です。
メリット: 親自身も「目的地到達」というストレスから解放され、自然体験の中に癒されることができます。
テク5:子どもの「やってみたい」を最優先する
「今月は虫採集をしよう」と親が計画するのではなく、子どもの「これやってみたい」という声を最優先にします。
わが家の場合、「子どもの発案による体験」の方が、圧倒的に子どもが没頭し、学びが深いように感じています。
「自分で決めた」という「主体性」が、子どもの脳の学習回路を最も強く活性化させているようです。
親の「心の在り方」が体験を左右する
体験をするうえで、非常に重要な点は「親が楽しんでいるか、退屈そうにしているか」ということです。
わが家でも最初は、「子どものための体験!」という義務的な気持ちで公園に行っていました。
しかし、ある時から「私自身も、この季節の変化を楽しむ」という視点を持つようにし、自分が誰よりも周りに興味を持つことが子どもの好奇心を動かすきっかけになったと感じます。
- 親が「冬の空気になったね」と言えば、子どもも「空気の違いに気づき」これが冬の空気かと感じるようになるのです。
- 親が心から「この虫、珍しい」と驚けば、子どもも「えっ、珍しいのか。調べてみよう」となるのです。
つまり、「子どものための体験」ではなく、「親自身も楽しむ体験」にシフトした時に、その体験が最も深く、子どもの脳に刻み込まれるのです。
習い事と体験:二者択一ではなく「統合」を目指す
わが家は体験も大事にしたいけど、習い事からしか得られないスキルもあると感じています。
わが家の長男は、現在野球やピアノを習っています。その関わりの中で得られるものもとても大きいです。
重要なのは、「習い事 vs 体験」という二者択一ではなく、バランスだと思っています。
- スポーツを通じて、チームワークや問題解決能力を学ぶ
- 音楽習い事を通じて、リズム感や表現力を学ぶ
- 自然観察教室など、本物の体験をメインにした習い事を選ぶ
要は、「習い事を、単なるスキル習得の場」ではなく、「子どもの非認知能力を育てる体験の場」として位置づけられるかどうかが重要なのです。
習い事を減らす罪悪感との向き合い方
「他の子は、もっと習い事をしてるのに...」
「受験のことを考えると、習い事は必要なのでは...」
「自分の仕事のせいで、子どもにしてあげられることが減っている...」

しかし、現在は良かったと感じています。
- 長男の時間の使い方が、習い事を減らした後の方が上手になった
- 「学習意欲」という点では、習い事を減らすことで逆に高まった
- 親子の関係が、より親密で、かつ子どもが親を信頼するようになった
つまり、「たくさん習い事をさせることが、良い親」という固定観念を手放した時に、子どもの人生の質が、むしろ上がったのです。
最後に:体験を通じて育まれる「生きる力」
子どもが何かに困った時に、「あ、この時は、あの時みたいにこうやってみようか」と、過去の体験から学んだ工夫を活用する姿を見た時に体験することには価値があると実感することができます。
子どもが人生を歩む上で最も必要な「困難に立ち向かう力」「自分で考え工夫する力」「人生を主体的に選択する力」は、そうした「体験の積み重ね」から生まれるのです。
「自然の中での遊び」「季節の変化を感じる」「親子で一緒に発見する喜び」など、自然の豊かさを感じる体験をすることで子どもの「生きる力」が育まれ、その子自身が人生を主体的に、幸福に歩める大人へと成長していきます。
平日は仕事で忙しいワーママだからこそ、親子で自然に触れる経験は子どもだけでなく親にもメリットを与えてくれます。
子どもの笑顔が最も輝く瞬間は、新しい高級玩具を手にした時ではなく、探していた虫を「あ、いた!」と見つけた時。
親子で同じものに驚き、同じものを調べ、同じ発見をする。その「共有体験」こそが、子どもの心と脳を最も豊かに育ててくれるのです。